【Moon River】キリンジの名曲「Drifter」の歌詞の意味の考察【感想あり】

キリンジの名曲「Drifter」の歌詞の意味を考察してみます。

Moon Riverとの関係や、僕と君の物語についての解釈です。

 

Drifterの前にキリンジの紹介を簡単に

Drifterの前にキリンジの紹介を簡単にします(知っている人は飛ばしてください)。

キリンジは、兄の堀込高樹と弟の堀込泰行の兄弟で結成されたバンドです(1996年)。

現在は、弟の堀込泰行は脱退し、6人組のバンドとして再結成しています。

 

たぶんいちばん有名な曲は「エイリアンズ」ですね。聞いたことある人もいると思います。

いろいろなアーティスト(↓)にカバーされている&愛されているバンドです

  • 秦基博
  • Mr.Childrenの桜井和寿
  • ライムスターの宇多丸
  • JUDY AND MARYのYUKI
  • MY LITTLE LOVERのAKKO、
  • aiko
  • JUJU

 

ミスチル櫻井和寿カバーの「Drifter」もスゴイ

私がそんなキリンジを知ったのは、ミスチルファンだったから。

ミスチル桜井和寿さんがBank Bandとしてカバーした曲が「Drifter」。

これを聞いたのがきっかけでした。

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Drifterの歌詞の良さに惹かれて、他の曲を聞いていると、音楽&歌詞がめちゃくちゃ良いものばかり。

そうして、キリンジ沼へとハマっていきました(結局アルバム全部揃えた…)

 

キリンジのDrifterの歌詞の意味を考察してみた

さて、本題。

キリンジのDrifterの歌詞の意味を考察してみます。

 

そもそもDrifterは、聞く人によって「印象がぜんぜん違う」曲です。

よくある意見としては、

  • 倦怠期の夫婦の曲
  • これから家庭を持つ夫の不安と決意を歌う曲
  • キリンジの兄が嫁に贈った曲
  • キリンジ自身の曲(兄から弟への曲)

など。

悲しいラブソングとも言えるし、個人の決意の曲、あるいは家族の曲とどうとでも解釈ができるよなーと思います。

 

Drifterのタイトルの意味と由来は?

そもそもDrifterは「漂流者・放浪者・浮浪者.」という意味。

曲の全体のテイスト的に「流されている感じ」が強く、漂流者のことかなと思います。

 

また、後半の歌詞を聞くと、古典名曲「Moon River」の名前が出てきます。
※「ティファニーで朝食を」の主題歌ですね

このMoon Riverの中に

「Two drifters(2人の漂流者 / 漂う2人)」

という歌詞がありまして、ここから来ている気がします。

 

Moon Riverの歌詞の意味

そもそもジャズの名曲Moon River自体がけっこう「比喩的」で理解が難しいです。

 

Moon Riverの歌詞の中で大事なキーワードは「虹の端っこ」という表現かなと思っています。

「At the end of the rainbow,there is a pot of gold」=(虹の端っこには、金の壷が埋っている)

ということわざから来ているっぽい。

虹の端っことは「夢が叶う場所(叶った場所)」という意味かな、と。

 

そう考えると、

  • もともと子供の頃に夢を持っていた「わたし」がいる
  • カーブを曲がった所に「虹の端っこ」がある(=見えないけどこの先で夢が叶うかも)
  • その夢に向かって続く川「ムーンリバー」を渡り切ってみせる

という感じで「いつの日か夢叶うまで、諦めずに進んでいく」という曲に思えます。

こう考えるとDrifterの「個人の決意」部分がこの歌詞が元になっているのかな、という気もします。

 

愛とは与えるより多く奪うもの(トルストイと有島武郎)

愛とは与えるより多く奪うものという歌詞があります。

みんな愛の歌に背突かれて 与えるより多く奪ってしまうんだ

引用元:Drifter、キリンジ

これは、トルストイと有島武郎が元ネタになっていそうな感じもします。

 

ロシアの作家トルストイは言いました

  • 「恋は奪うもの、愛は与えるもの」
  • 「愛は惜しみなく与うもの」

と。

 

この言葉に対して、日本の作家である有島武郎はこんな風に評論しました。

『愛の表現は惜しみなく与えるだろう。しかし、愛の本体は惜しみなく奪うものだ。』

 

この表現が元になっているのかなーという感じがします。

 

人形の家はイプセンの戯曲

歌詞の中に出てくる「人形の家」という言葉も元ネタがあるっぽいです

弁護士ヘルメルの妻ノラは、無邪気にヘルメルを含めて人間を信じ、貧しいものに分け与える心の余裕を持ち合わせた女性であった。彼女はヘルメルに「大切に」されていた。猫かわいがりするヘルメルの愛の性質に、気づいていながらも日々を過ごしていたノラにある日、事件が訪れる。

ヘルメルの部下クロクスタが、ヘルメルの留守を狙ってノラのもとに嘆願にやって来たのだ。彼は馴れ馴れしい態度を取ったためヘルメルに疎まれ、じきに解雇される予定であった。ノラは断ろうとするが、クロクスタは彼女の弱みを握っていた。それはヘルメルが重病に陥り金銭が不足したとき、彼女はクロクスタから借金をし、その際、借用証の父のサインを捏造していたということだった。当時、彼女の父は重病であったため、これは苦肉の策であった。もし解雇されるなら、この事実をヘルメルに暴露すると、クロクスタに宣言されたノラは悩む。自分を支配しているヘルメルがこのことを知れば、すべての生活は破滅することは目に見えているからだ。

やがて、ノラはヘルメルにクロクスタの解雇を取り消すよう頼むが、事情を知らないヘルメルは取り合わず、クロクスタは解雇される。宣言どおりクロクスタは暴露する手紙をヘルメルに送った。事実を知ったヘルメルは激怒し、ノラをさんざんに罵倒する。すべての終わりがやってきたと思ったさなか、改心したクロクスタから捏造の証拠である借用証書が送られてくる。これでヘルメルの危機は過ぎ去った。先ほどまでの態度を豹変し、再び微笑んで甘いことを言い放つようになるヘルメル。ヘルメルが対等な人間として、絶望や悩みを共有し、喜びを分かち合える存在、「1人の人間」として自分を見ていないことにノラは絶望し、ヘルメルの制止を振り切り、ノラは家を出る。

イプセンの戯曲

 

長いので簡単に内容をまとめると、

  • メルヘル(夫)とノラ(妻)は仲良く暮らしていた
  • メルヘルはある事件から、メルヘルを罵倒する。しかし誤りに気づき途端に態度を変える
  • ノラは「自分は一人の人間として見られていない」「人形のようだと気づき家を出る

といった内容。

 

Drifterの歌詞は情報量多すぎ

歌詞を考察するに当たり、断片的なパーツを見てみました

  • Moon Riverは「夢を追いかける」という意味
  • 有島武郎から来た「愛は奪うもの」
  • 人形の家は「人形扱いされていた自分に気づき、人間として活きる決意」

と捉えると良いと思うのですが、Drifterの歌詞は他にも情報多すぎますね。

 

Drifterの難解だが魅力的な歌詞を分析する

Drifterの難解だが魅力的な歌詞を分析するために、気になったフレーズをピックアップして見ていきます。

 

交わしたはずのない約束

冒頭からして、印象的な一節。

交わしたはずのない約束に縛られ
破り捨てようとすれば後ろめたくなるのは何故だ

引用元:Drifter

どうすれば、こんな素敵な歌詞が思いつくんだというような表現です。

誰もが共感する「感じ」を、端的に表す詩的能力の凄さ。

 

これは

  • 社会的な慣習
  • 周囲の圧力による義務
  • 自分が自分にかけた呪い

みたいなものかな、と最初思いました。

 

ただ「生きなければいけない」という生存本能とも捉えられます。

この後の

  • 「永遠を測れない」→いつか人は死ぬ
  • 「手巻きの腕時計」→自動ではなく意識的に生きる
  • 「夜更けに襲う鬱」→生きるのが辛い感じ

という部分から「生と死」を感じます。

 

「お金がすべてだぜ」と言い切れたならきっと迷いも失せる

次に気になるのはこの歌詞。

流氷のような街で追いかけてたのは逃げ水

(中略)

「お金がすべてだぜ」と言い切れたならきっと迷いも失せる

引用元:Drifter

これもグサッとくる。

 

「流氷のような街」とは冷たい世間のこと。

その中で、追いかけてたのは「逃げ水(幻想・蜃気楼)」だった。

社会的な成功とかそういうものかな?

そんな社会の中で「お金のためだ」と言い切れればそのまま幻想を追い続けられる。

 

だけど自分は、MoonRiver(夢に続く川)を渡りたい。

「人形」のように自動的に他者の思惑に支配されて生きるのも嫌だ。

 

僕はきっとシラフな奴でいたいのだ

引用元:Drifter

という歌詞からも、他者や周囲に影響されず、自分が思う正しい道を歩みたいという決意を感じます。

精神的に追い込まれているし、正しい道に迷うけど、正常な状態でいたい。

お酒に「逃げたく」ない。
※サビの「僕は逃げない」というのはここのことを指している

酔った勢いではなく、冷静に理性的にそう思いたい、と再度決意をするということ。

 

僕とあなたと不安

辛い現実の中でも、生きることを選び、ムーンリバーを渡りたい(夢を叶えたい)と考える「僕」。

それを支えるのは「あなた」です。

 

これって「あなた=夢」という比喩かな、と一瞬思ったのですが、違う気がします。

「子供が泣いている」という歌詞があったので、「僕、あなた、子ども」の家族なのかな、と。

 

僕は「あなた」がいれば、鬱が襲う夜でも、うまくいかない予兆(カラスが祈りを引き裂くこと)があっても、大丈夫と思っています。

しかし、あなたがいなくなるのではないか?という不安を持っていることも同時に分かります。

みんな愛の歌に背つかれて 与えるより多く奪ってしまうのだ
乾いた風が吹き荒れて 田園の風景を砂漠にしたなら
照りつける空の下 あなたはこの僕の傍にいるだろうか?

引用元:Drifter

この歌詞から分かるのは、多く奪って何もない状況(砂漠)になっても、あなたはいてくれるのか?という疑心ですね。

最後の「だろうか?」の「?」にもその気持ちが表れています。

 

まとめ:Drifterはこんな意味と解釈

ってことでまとめると、私はDrifterはこんな歌詞だと解釈しました

  • 歌詞の主人公「僕」は生きるのがシンドいくらい精神的に追い込まれている
  • 冷たい世間。社会的な理想を追いかけたくなる。「僕」は世間に流されそう(Drifter=漂流者)
  • そんな僕が、ギリギリで踏みとどまるのは「あなた」がいるから。
  • 「あなた」がいてくれれば、正しい道を歩いていけると思っている

という前提があった上で最終的なメッセージは「あなた」に向かって

「だから、こんな僕についてきてくれるかい?」
(この僕の傍にいるだろう?)

という愛の歌なのかな、と思いました。

「あなたがいないと駄目な僕」と考えると、頼りない男だな…という印象。

でも見方を変えると「僕の人生にあなたが絶対に必要だ」とも捉えられるかな、と思います。

 

以上、個人的なキリンジのDrifter解釈でした。

もしキリンジに興味を持ったらベストアルバムを是非聞いてみてほしいです、他にも良い曲あるんで↓

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