映画「若おかみは小学生!」を見てきたので、感想&考察&解説します。
ハッキリいって良質な映画でした。
可愛い絵柄の奥で、
- 生と死という重たいテーマ
- 主人公おっこのちょっとした不穏さ(サスペンス)
- 様々な経験を通じた成長
- 心揺さぶられる感動
が待ち構えています。
目次
劇場版アニメ映画「若おかみは小学生!」ネタバレ感想考察解説
劇場版アニメ映画「若おかみは小学生!」のネタバレありの解説&考察です。
個人的な感動とあわせて、語りますね。
おっこが若女将に成長するまでの話
この映画は、おっこが若女将に成長するまでの話です。
両親の死と対峙し、受け入れ、成長していきます。
最初、おっこは両親の死を受け入れていませんでした。
- 旅館到着後、両親が死んだという話題で泣かない
- 夢の中で両親と話をする
- 夜中にプリンを食べた=誰かいる
などの描写から分かります。
それゆえ、ちょっとしたサスペンス感といいますか、おっこの気持ちが読めない展開が続いていきます。
おっこはここまで一切泣き顔を見せません。
大きな転換となったのは、2番めの占い師の客「グローリー水領」です。
彼女と出かけたドライブでの「事故のフラッシュバック映像」を通じて、おっこは両親の死を改めて認識します。
※この時の映像描写の迫力がとてつもなかったですね
そして、最後。
3人目の客である「おっこの両親を殺した加害者」と対峙し、幽霊のように見守っていた(あるいはおっこの妄想だった)両親と正式にお別れをします。
この時、春の湯温泉と同様に、おっこは「すべてを受け入れる」のです。
過去を受け入れ、事故の原因となった相手を受け入れ、イマジナリーフレンドとしての幽霊(ウリ坊たち)との別れを受け入れます。
そして、現在の自分の「若おかみ」という立場を受け入れます。
3人の客はそれぞれ、おっこの過去、未来、現在を表す
3人の客はそれぞれ、おっこの過去、未来、現在を表しています。
最初の客「神田あかね」は、ありえたかもしれない「おっこの姿」でした。
※親の死を嘆く姿
次の客「グローリー水領」は、未来のおっこです。
占い師というサービス業、人を癒やす役割など、おっこが招来なりたい理想の姿でした。
最後の客「木瀬翔太」(親子の子供の方)は、過去のおっこです。
両親に甘えて、虫を嫌がる姿はまさに、旅館に来る前のおっこでした。
※おっこは虫が嫌いと前半で描き、後半では「虫を受け入れる」描写でしたね
おっこが両親の死を受け入れられたのは、現在、未来それぞれの「おっこ」との出会いを通じて、「過去」と向き合えたからです。
最後は、未来の「おっこ」の象徴「グローリー水領」と共に、過去をしっかりと受け入れたのです。
子供が見たらトラウマになりそうな「ありありとした死の描写」
子供が見たらトラウマになりそうな「ありありとした死の描写」がこの映画のポイント。
なんといっても最初のトラックが突っ込んでくるシーンの迫力が凄かったですね。
茄子アンダルシアの夏の監督や、ジブリの作画監督を務めた経験がゆえの、圧倒的なアクション、絵の動き。
事故直前の狐の仮面のドアップ、緊張感高まる音楽などで「なにか起こるぞ」と予感させる演出も秀逸でした。
そして、占い師と出かけたドライブでの「トラック衝突のフラッシュバックシーン」の悲惨さ。
PTSD発症するのも無理はない、圧倒的なリアリティでした。
ちなみにその後の買い物シーンは、その「苦しみ」を晴らすように、作品一番の盛り上がり。
日曜朝8時の少女向けアニメのような超POPで明るい歌。
買い物、着せ替えという女の子らしい楽しみ。
また、幽霊たちも着せ替えで遊ぶなど、とにかく開放感あるシーンでした。
※ヘビーな展開からの反転がスゴいな、と思いました
おっこの精神力の強さ
おっこの精神力の強さが際立つ作品でした。
後半に名実ともに「若おかみ」となる以前から、おっこは自立していました。
例えば、最初に旅館を訪れたとき、スーツケースをあえて自分で持っていました(人に任せない)。
最後の加害者の父親を許すシーンも、幽霊の両親、未来のおっこ(グローリー)などの後押しもありつつも、基本的に彼女の強さによるものです。
ただ一方で、小学生にそこまでの精神的成長と、若おかみとして旅館を継ぐという役割をもたせるのも、結構酷だよなー…とも思ったり。
ちょっと気になったところ
この映画の、ちょっと気になったところです
- PTSD発症した女の子をそのまま買い物に連れて行く?
- 夜におっこを1人で出歩かせすぎじゃない?
- 両親が死んだばかりの子供を1人で旅館まで来させる?
- なんでウリ坊だけ物理的な鑑賞できなかったの?
- ピンフリの知識で料理人が「なるほど」ってなるの可哀想じゃない?
- 後半で声優が山寺宏一(やまちゃん)というので、この男なにかあるぞと思ってしまう
などなど。
基本は子供向け作品なので、気にしてはいけないとおもいますけどね。
若おかみは小学生!はアニメ好きなら見るべき
本の原作20冊のエッセンスを取り出して、これほどの完成度で100分映画に収めているその手腕に脱帽です。
また構成もさることながら、なんといっても「アニメの絵」が素晴らしいです。
先述のトラックシーンだけじゃなく、ウリ坊の空に浮遊するシーン、プリンの美味しそうなカットなど。
アニメ好きなら、是非見てほしい一作でした。
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