スタジオジブリの2人の映画監督、高畑勲さん、宮崎駿さん。
宮崎さんが飲み屋で語った「高畑勲への思い」が胸にグッとくる内容でした。
目次
高畑勲、宮崎駿が出会ったきっかけ
東映動画の組合で、高畑さんが副委員長で、宮崎さんが書記長でした。
その組合での活動が、知り合ったきっかけです。
そこから二人は仕事で名作アニメをたくさん作りました。
- 「太陽の王子ホルス」
- 「アルプスの少女ハイジ」
- 「母をたずねて三千里」
- 「赤毛のアン」
などなど。
「風の谷のナウシカ」前日談
スタジオジブリの設立メンバーの鈴木敏夫さんという方がいます。
鈴木さんが、宮崎さんに「風の谷のナウシカ」の映画化の話をもちかけます。
元々、ナウシカはアニメージュという漫画雑誌で連載していた漫画作品でした。
※漫画の途中までが映画の話(漫画の後半はかなり衝撃的な展開)
宮崎駿が「風の谷のナウシカ」映画化にあたって出した唯一の条件
「風の谷のナウシカ」映画化にあたり、宮崎さんは一つの条件を出します。
鈴木さんの書籍から引用します。
「ぼく」は鈴木さんです
いよいよ映画化の話が本決まりというとき、条件があると言う。
「条件はただひとつ」とポツンと言ったんですね。
「なんですか?」と聞いたら、
「高畑勲にプロデューサをやってもらいたい」。
ぼくはそのとき、あまり重大に思わず、ふつうに「そうか」と思いました。
二人はずっといっしょにアニメーションを作ってきた盟友ですからね。
(略)
ところがそれは簡単なことじゃなかったんです。
※引用元:鈴木敏夫「仕事道楽」
鈴木さんは、宮崎さんの願いを聞いて、高畑さんに「プロデューサーになってくれ」と頼みに行きます。
ところが…
理屈っぽい人「高畑勲」
頼みに行った鈴木さんは、理屈っぽい高畑さんにやられてしまいます。
※彼=高畑さん ※僕=鈴木さん
二週間も通った挙げ句、彼が僕に示したのが大学ノート一冊。
そこに調べたことをどんどん書き込んでいる。
自分が付き合ってきたプロデューサーのことから、日本のプロデューサーにはどんなタイプのプロデューサーがいたか、アメリカ型のプロデューサーはどうか、ヨーロッパはどう違うか、等々。
(略)
そうしたら、ノートの最後の一行が「だから、僕はプロデューサーに向いていない」。
二週間も付き合ったんですよ、ぼくももういいかげん嫌になってしまう。
高畑さんは東大を出ているエリートです。
弁も立つし、論理的。
そんな人にノート一冊を使って「私はプロデューサーになれません」と言われてしまったんですね。
スタジオジブリの宮崎駿監督が泣きながら語った「高畑勲への思い」
プロデューサになってほしい宮崎さんと、プロデューサになりたくない高畑さん。
二人の板挟みにあう鈴木さん。
仕方なく、宮崎さんに「高畑さんがプロデューサーやりたくない」と言っていると告げに行きます。
ここからまるで映画のような場面が展開されます。
※宮さん=宮崎駿
「宮さん、高畑さんがプロデューサーじゃなければいけないんですか?」
そうしたら、彼は黙っている。
そして「鈴木さん、お酒を飲みに行こう」と言い出しました。
ぼくはお酒が飲めません。
宮さんもふだんは酒場に足を踏み入れない人です。
それなのにそう言う。ぼくも黙ってつきあいました。
飲み屋に行ったら、宮さん、日本酒をガブ飲みするんですよね。
ぼくはもうびっくりしました。
それまでぼくが見たことのない宮崎駿です。
それで酔っ払ったんでしょう、気がついたら泣いているんです。
涙が止まんないんですよ。
ぼくも困っちゃってね、言葉のかけようがなくて。
黙ったまま、とにかく浴びるように飲んでいる。
そして、ポツンと言ったんです。
「おれは」と言い出すから、何を言うかと思ったら、
「高畑勲に自分の全青春を捧げた。何も返してもらっていない」。
これには驚かされました。
ぼくも言葉が出ないし、それ以上は聞かなかった。
「そうか、そう言う思いなのか」。
このシーン、映像がまじまじと浮かびますね……
鈴木さんは友人でもある宮崎駿のために、さっそく行動します。
ぼくはその足で、高畑さんのところへ行きました。
「高畑さん、やっぱりプロデューサーをやってください」
「いや、このあいだ話したように、ぼくは向いてないんですよ」。
つい、でかい声になりましたね。
「宮さんがなってほしいと言っているんですよ、宮さんがここまでほしいと言っているんですよ。友人が困っているのに、あなたは力を貸さないんですか」
ぼくが高畑さんの前で大きい声を出したのは生涯一回、そのときだけです(たぶん)
もう理屈じゃないです。
そうしたら高畑さん、「はあ、すいません。わかりました」。
これでやってくれるようになった。
こうして、高畑さんプロデュースのもと、名作「風の谷のナウシカ」は生まれました。
まるでドラマのような現実。
スタジオジブリは映画の裏側も、映画のような日常なのです。
以上の引用は鈴木敏夫さんの「仕事道楽」からでした。
他にも面白い話がたくさんあります。
「事実は小説より奇なり」を地で行くジブリの日常が垣間見える、凄い本です。
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おわりに:スタジオジブリの人々は面白い
このエピソードから分かるようにジブリ設立の3人の関係、キャラクタはかなり個性的です。
- 情熱的(感情的)な宮崎駿
- 論理的(冷静)な高畑勲
- 二人のクリエーターに挟まれる苦労人な鈴木敏夫
実は、この3人の日常を題材にした作品があります。
「エンディングノート」を監督した「砂田麻美」さんが作った「夢と狂気の王国」というドキュメンタリー映画です。
- 夢と狂気の王国=スタジオジブリ
- 王国の住人=宮崎、高畑、鈴木
です(隠れた名作)。
先程の話が面白いと思う方にはオススメ。