漫画「放課後さいころ倶楽部」のネタバレ感想(レビュー)です。
この作品、扱っているボードゲームの量と、その説明の上手さが注目視されますが「実は話も面白い」です。
ってことで、個人的な面白いポイントなどを語っていきます。
目次
「放課後さいころ倶楽部」のネタバレ感想(レビュー)
「放課後さいころ倶楽部」の感想(レビュー)です。
- 作者:中道裕大
- 出版社:小学館
- 掲載誌:ゲッサン
- レーベル:ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル
- 発表号:2013年4月号
ボードゲームの紹介の面白さについてはこの記事が参考になります↓
関連記事:「放課後さいころ倶楽部」のボードゲームまとめ【個人的オススメ度も】
で、個人的注目は人間ドラマ。
キャラの成長(周囲との付き合いの変化)や、恋愛が読んでいて面白いです。
特に面白いのは「ミドリがボードゲームデザイナーになるまでの話」だと思っています。
【第4巻】自分でゲームを作りたくなる(ミドリの自作ボードゲームの話)
第4巻でミドリは、ジョージ(店長の友人でありボードゲームデザイナー)にテストプレイしてもらうことになります。
未完成ゲームを出すのを渋るミドリに、ジョージは語ります
「頭の中で考えているうちはダメです」
「ゲームはひとりじゃ作れない」
そして、ミドリは友人にゲームをやってもらいます。
ゲームのできは散々でしたが、テストプレイしてもらうこと(プレイヤーと一緒に作ること)の重要さを知り、ゲームデザイナーの道を歩み始める…というお話でした。
【第5巻】エミーのゲーム分析が面白い(だるまさんがころんだを面白くする方法)
ミドリのライバル枠として「ゲームデザイナー」を目指すエミー。
彼女のゲーム分析が面白いです。
第5巻の「だるまさんがころんだ」をどうやって面白くするか考えるシーンが好きです。
「終わり」と「ごほうび」を付け加えるというシンプルなルールでして、
- 子どもは鬼にタッチができたら1ポイントGET
- 鬼は、子どもに逃げられた後、決められた歩数でタッチできたら1ポイントGET
- 1人1回ずつ鬼をプレイする
- 合計ポイントが高い人が優勝
という感じ。
【第7巻】ボードゲームコンペに出展
第7巻では、ボードゲームコンペに出展という展開になります。
ミドリの作った「ワンルーム バージョン2」を、みんなでテストプレイします。
ついつい「まとまったゲーム」を作ってしまうミドリは、自身の道を見つけます。
今まで頭のどこかで勝手に思考を縛ってた
私の尊敬するデザイナーがそうして来たから、プロの作るゲームは「こうあるべき」だって
でもいつのまにか「こうあるべき」にとらわれて、自分の「こうしたい」を置き去りにしていた
…
何の遠慮も制限もいらない
私のやりたいこと、全部詰め込んでいいんだ
挑戦する時のいくつかの壁
挑戦する時のいくつかの壁があるよなあ、というのが個人的な感想です。
- 憧れて、自分でも生み出したいと思うこと
- 実際に作ってみること
- 作ったものを一旦は完成させること
- 他人の評価に晒すこと
- 分析し修正するサイクルを回すこと
- 成功するまで続けること
という段階で、それぞれ壁があります。
ミドリのように、将来の夢として憧れを持っている場合でも「3.完成」までいくのは大変です。
さらに言うと「4.他人に見せる」というのも、心理的な負担が大きいことが、漫画を読んでいて気づきました。
消費だけでなく「創作する」方が何倍も面白いと思いますが、やれるのは「壁」を乗り越えた人だけなのだな、と思います。
※そもそも作者自身が、ボードゲーム好きが講じて、ボードゲーム漫画を「創作」してますし
よもやま話と巻末のコラムが面白い
本編からそれますが、
- すごろくやの丸田さんの「ボードゲームよもやま話」
- 作者の中道裕大さんの「巻末のコラム」
が面白いですw
作者達のボードゲーム愛が伝わってきますw
特に、ボードゲームよもやま話に関しては、限られたスペース内で、ゲームの本質・面白さを説明しています。
インスト(ゲーム説明)をする際の参考になりますね。
第1巻からサービスシーンを入れるのがスゴい
女子高生×アナログゲームという新ジャンル。
そこを切り開くためか、第1巻では早速「サービスシーン」が入っています。
具体的には、転校生の「高屋敷綾」が池に濡れて、下着姿になります。
その後も、時折「水着カット」「温泉カット」を入れたりと、読者の心をよくわかっています(絵柄が可愛いので非常に良いですね、はい)
新ジャンルを始めるときには、潜在層をいかに取り込めるかが重要になります。
それ故、こういう本能的なところを責めるのは、良い「戦略」だなと思いました。
店長が良い
数少ない大人の「店長」が良いです。
店長(金城タケル)は、もともとアメリカ国籍で、米軍沖縄基地にいました。
で、ジョージ、マイクという同僚とボードゲームをやっていました。
グルメ漫画で料理を通じて仲良くなるように、この漫画ではボードゲームをやって仲が深まり友情が芽生えます。
カタンをやって、お互いのことを認めあったエピソード(2巻)が好きです。
「趣味」の領域でのふれあいを通じて、人同士が変化するというのに、ついつい人は引かれてしまいます。
きっとそれは、敷居の低さと、趣味の持つ面白さ・得体の知れない深さを垣間見るからかな、と。
3巻では「バトルライン」というかなり頭を使う2人用ゲームで戦う場面も良かったです。
ゲームデザイナーになったジョージに、委員長(ミドリ)のゲームをプレイしてもらうために、わざと負けていました。
いわば、勝負に勝って試合に負けた的な展開。
店長のキャラクタ描写にもつながるし、良いエピソード。
あと印象的なのが、7巻の「マイクの彼女がスパイだった」という話。
名作ボードゲーム「プエルトリコ」の内容紹介が良かったですし、女子高生のほのぼのした世界線とかけ離れた展開も面白かった。
女子高生というフックで、表現の制限が生まれてしまいますが、こういう別世界の話を挟むことで、表現の幅が生まれますね。
8巻からまさかの主人公交代&店長と女子高生の恋
7巻最後で、学年が変わることになります。
で、8巻からまさかの主人公交代です!w
さらに店長があこがれの人枠で、女子高生とおっさんとの恋愛物語が始まります!w
7巻までの愛着あるキャラクタも徐々に出てきて、「放課後さいころ倶楽部」世界がどんどん広がっていく感じも楽しいですね。
さながら拡張パックのごとく、楽しめます。
友情の次は、報われない恋愛というテーマが作品を覆います。
ボードゲームの本質は「知略、そして運をいかに味方につけるか」だと個人的には思っています。
ということで、なんらかの戦略が発揮される、そして最後は運に任せるという展開があると、嬉しいなあと思っています。
…って感じで、今後も長く続いて欲しい漫画です。
放課後さいころ倶楽部の中で紹介されたボードゲームについてもまとめました
» 参考:「放課後さいころ倶楽部」のボードゲームまとめ【個人的オススメ度も】