「あひるの空」の作品の自由さは、作者が創作の権利を勝ち取った結果

あひるの空は「作者が創作の権利を勝ち取った」結果生まれた、面白い漫画です。

ネタバレ無しで紹介します。

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あひるの空とは?

「あひるの空」とは

  • 講談社「週刊少年マガジン」連載中のバスケ漫画
  • 作者は日向武史
  • 累計2400万部の売り上げ(マガジン看板作品)

という作品。

 

あひるの空で日向武史さんが描きたいのは「青春と心理」

この漫画で作者が描きたいものは、登場人物の心情、細やかな人間関係でしょう

高校生特有のクローズドな環境での仲違い、関係の修復。

期待と異なる自身の才能の限界、決して追いつけない現実。その克服。

どうしようもない家庭環境という残酷な事実と、個々人の向き合い方。葛藤。

 

勝った負けたがどうしたとか、すごい才能で手に汗握る展開ではない。

そんな記号的な情報はどうでもよい。

多くの少年漫画たちがすでにその道は開拓しているから。

 

ある一つの物事に賭ける人々から、必然的に紡ぎ出される内面の声

多くのスポーツ漫画では、無視されてきたその「気持ち」をあひるの空では、優しく描いています。

 

あひるの空の「バスケ漫画的な特徴」

あひるの空は「バスケ漫画」なのでもちろん、強い仲間が集まって、強敵たちと戦います。

  • 低身長ながらも超高精度の3Pシューターの主人公
  • センスが抜群の元不良の双子
  • 偶然入った天才フォワード
  • 高身長センター

純粋に、スポーツ漫画として少年心をくすぐります。

 

そしてもちろん、インターハイ(全国大会)を目指して戦います。

主人公は、死別した肉親との約束を果たすため、インターハイを目指します。

天才フォワードは、離れて暮らす妹とインターハイの場で会う約束をします。

それぞれのキャラに、強い動機があります。

 

しかし、物語も佳境の40巻あたりで意外な展開が待っています。

 

これってなかなか普通のスポーツ漫画ではできない内容です。

何故こんなことができたのか?

それは作者が「創作の自由を勝ち取ったから」です。

 

押井守の勝敗論から学ぶ「創作者の勝敗」

話変わりまして、押井守さんが「創作者にとっての勝敗」を語っています。

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自分にとっての”戦いに勝つ”ということの本質、それを理解することが一番大事なんだよ。

じゃないとその場限りの勝った負けたで一喜一憂して、世間的な価値の尺度に振り回されて、消耗するだけです、永遠に。

それは自分にとっての本当の勝利、本当の成功からは遠くなるだけです。

引用元:勝つために戦え!

 

また、興行的な成功(売り上げ)や、受賞よりも大事なことがあるとも。

映画監督の勝利条件ってなんだっていつも言ってるけど、

…次回作を撮る権利を留保することなんだよ

引用元:勝つために戦え!

 

つまり、「自分の作りたいものを、作り続けられること」が最も大事だという話です。

この補助線をひいた上で、あひるの空を考えると何が見えてくるか?

 

「あひるの空」の作品の自由さは、作者が創作の権利を勝ち取った結果

「あひるの空」の作品の自由さは、作者が創作の権利を勝ち取った結果だと思います。

 

「押井守」の文脈に沿って考えれば、「あひるの空」は勝利条件を満たしていますよね。

少年漫画(しかもマガジンという大メディア)という場で、自分のやりたいことを、やり続けている。

連載という権利を留保し続けています。

 

無理やりな勝利。

読者受けを意識した必殺技。

そんなものに縛られる必要はありません。

 

そんなやり方で、ついには、この物語のクライマックスであろう対戦まで漕ぎ着きました。

まさに、創作の権利、作りたいものを作る権利を勝ち取った結果なのです。

 

まとめ:「あひるの空」の表現を楽しみましょう

ということで、「あひるの空」の表現を楽しみましょう。

こんなに感情描写が見事な漫画はなかなかありません。

 

勝利と敗北

努力と才能

仲間と個人

 

様々なことを考えさせられる漫画です。

そして、この作品が奇跡的に成立する裏側では、作者が権利を勝ち取ったという事実があった…というお話でした。

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